【派遣先責任者とは】派遣先責任者の職務と選任方法

労働者派遣法により、派遣先には派遣社員を受け入れる際に「派遣先責任者」の選任が義務付けられています。

なぜ、派遣先責任者が必要なのか

派遣先責任者が必要なのは、ルールに則って派遣契約を履行し、派遣社員の就業環境を適正に保つためです。では、派遣先責任者の職務はどのようなものでしょうか。以下にご紹介します。

派遣先責任者の主な職務

1.労働基準法や派遣契約の内容、派遣会社からの通知事項を、指揮命令者や関係者に周知する

具体的には、以下を関係者に周知する必要があります。

  • 労働基準法の内容(労働時間の管理、時間外労働の上限等)
  • 労働者派遣契約の内容(業務内容、就業部署、受入れ期間、安全衛生等)
  • 派遣会社からの通知(派遣社員の氏名、業務内容等)

契約外の業務指示が発生しないよう、指揮命令者と関係者に対して事前に十分な周知を行うこと、派遣社員の就業開始後も契約内容が守られているか等を日常的に確認することが求められます。そのため、労働者派遣契約書や派遣会社からの通知書等を、指揮命令者も閲覧できる状態にしておくことが大切です。

2.事業所の派遣受入れ期間を延長する際は、派遣会社に通知を行う

同一の派遣先事業所において派遣社員を受け入れられる期間は、受入れ人数や各派遣社員の受入れ開始時期に関係なく、最初に受入れを始めた日から3年が上限です。事業所の派遣受入れ期間延長のための「労働組合等」への意見聴取の手続き等は、多くの場合、派遣先責任者が行います。

3.派遣社員の均等・均衡待遇を確保するため、必要な情報を把握する

派遣契約締結の際に派遣会社に通知した以下の情報について、契約内容が適切に守られているかを確認します。

  • 教育訓練の実施状況
  • 福利厚生施設の利用状況
  • 派遣会社に通知されている派遣社員の業務遂行状況(業務内容や責任の程度に変わりがないか)等

そのために、指揮命令者との定期的なコミュニケーションや派遣社員の受入れ部署の巡回等、状況に応じて情報収集の手段を検討しましょう。

4.派遣先管理台帳を作成・記録・保存し、記載事項(就業日・就業時間等)を通知する

昨今では派遣会社のWeb管理システムで管理・通知できる場合が多い傾向にありますが、状況に応じて指揮命令者に内容の確認を指示することも、派遣先責任者の職務です。

5.派遣社員から申出を受けた苦情に対応する

派遣先責任者の他に、苦情申し入れ窓口となる担当者の選任も必要です(派遣先責任者が兼務する場合も少なくありません)。派遣社員はその立場上、不満を表に出しづらい傾向があります。そのため、定期的なヒアリング等を通して、就業状況を把握するよう努めることも大切です。併せて、派遣会社へ苦情の申出がないかも確認しておきましょう。

6.派遣社員の安全衛生に関して、派遣会社と連絡調整を行う

派遣社員の安全衛生を確保するために、派遣会社との連絡・調整を適切に行うことも求められます。具体的には、以下のような事項が挙げられます。

  • 健康診断や特殊健康診断の実施
  • 安全衛生教育の実施
  • 労働者派遣契約に定めた安全衛生に関する事項の実施
  • 事故等が発生した場合の内容把握と対応状況の共有 等

派遣先責任者の選任方法

派遣先責任者の役割は、派遣社員の指揮命令ではなく就労管理です。そのため、派遣先責任者は以下の要件を満たすことが望ましいとされています。

  • 労働関係法令や人事・労務管理に関する知識や経験があること
  • 派遣就業に関する一定の権限を持つこと

なお、派遣先責任者は派遣社員を受け入れる事業所ごとに、派遣先が雇用する労働者の中から専属で選任しなければなりません。
※「専属」とは、他の事業所との兼務ができないことを意味します。派遣先責任者の業務のみを行うという意味ではありません。